【症状】
基本的に初期段階では無症状。
全身倦怠感、腰背部痛、腹部腫瘤感の三つは古典的3徴と呼ばれています。
特異的ではないが、全身倦怠感、発熱、貧血、体重減少などの症状が出現することもあります。
【診療科】
腎移植外科、泌尿器科、腎臓内科、など
病院によって担当している科が異なる場合があります。
後にも述べていますが、基本的に外科的治療になるので
外科系診療科にて治療が行われると思っておいたほうがいいでしょう。
【検査】
超音波検査
一番簡便な検査。侵襲が少ないため、スクリーニング検査として広く用いられています。
病変は内部が不均一な充実性腫瘤性病変として描出されます。
造影CT検査
造影CT検査とは造影剤を血液中に流し込みながらCTをとる検査のことで、
血流の多い部分には造影剤が多く入るので、CT画像で白く映ります。
これを高吸収域といいます。
逆に黒く映っている部分を低吸収域といいます。
動脈相で高吸収域となり、実質相や排泄相では低吸収となります。
造影剤注射後の経過時間はそれぞれ、
動脈相(30秒後程度)、実質相(90秒後程度)、排泄相(5分後以降)です。
単純CT検査
実際、腎細胞癌の疑いのある患者さんの診断に実施することは少ないです。
ただ造影CT検査は侵襲性が高く何度も行うことはできないので、
癌の診断ではなく経過を観察するためにサイズを確認する際のみに行います。
MRI
造影CTが禁忌の患者さんにのみ行われる検査です。
通常は造影CT検査が優先され、MRIは行われません。
血液検査
血小板数・総タンパクの値が低い、
CRP・LDH・アルカリフォスファターゼ・AST・ALT・クレアチニンの値が高い
という可能性があります。
赤沈が亢進することもあります。
多くのがんでは腫瘍マーカーが存在し、血液検査で癌のスクリーニングとして用いることができますが、
腎細胞癌には診断に有用な腫瘍マーカーが存在しません。
そのため、血液検査だけでがんが見つかりということはなかなかありません。
【治療】
根治的腎切除術
標準治療は根治的腎切除術となります。
腎臓とその周囲の組織をまとめて摘出します。
開腹手術と腹腔鏡下手術がありますが、
近年は転移や浸潤が無い場合は
腹腔鏡が用いられることが多くなってきました。
腎部分切除術
両側発症の場合や、対側の腎機能が著しく低下している場合は
腎臓を摘出すると腎の排泄機能が保たれないため、腎部分切除術が適応となります。
他にも4cm以下の小さな癌も適応となっています。
腎臓に切り込みをいれるため、腎摘に比べて出血や尿漏のリスクがあります。
最近はロボット支援下手術が保険適応されるようになり、
より低侵襲で治療ができるようになりました。
転移巣切除
遠隔転移した転移巣も外科的に取り除きます。
ただしこれは転移巣が単発の場合のみで、
転移が多発している場合は薬物療法を行います。
その他
抗がん剤療法、放射線療法は効きがよくないので基本的には行われません。
ただし、遠隔転移やリンパ節への転移が認められている場合は、
手術と併用で行うことがあります。(分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)
手術以外の治療で根治的なものは現在のところ存在していません。
ちなみに…
標準治療とは科学的な根拠のある最適最善な治療のことです。
一般的にその治療に禁忌などが無い場合、その他の考慮すべき事項がない場合、
において最もよく効く予後の良いものです。
標準という言葉のイメージとして
「普通」とか「平凡」といった印象を受けるかもしれませんが、
医療で用いる場合は少し違うため
安心して標準治療をうけてほしいです。
【予後】
予後予測因子としては血液検査の結果からわかるCRPや赤沈があります。
転移を起こすともちろん予後は悪くなってしまいます。
肺、肝、骨が転移の好発部位として挙げられます。
腎細胞癌は晩期再発と呼ばれる、術後数年たった後に遠隔転移が出現するという症状が
起こることがあるので、10年以上の経過観察が必要になってきます。
治療がずっと続くわけではないのですが、
気の抜けないという点では長い戦いにはなってきます。
【リスクファクター】
肥満、高血圧、喫煙、遺伝因子、環境因子、透析療法患者、などがあります。
好発年齢は50歳以上です。
男女比は2~3:1で少し男性に多い印象です。
心当たりのあり方は定期健診などを受けて指摘されないか注意しておきましょう。
【医学生より一言】
腎細胞癌は早期には非常に症状の乏しい病気です。
多くの患者さんが定期的な検診や、他の疾患の精査中に発見されるケースが多いです。
早期に発見されれば予後の非常にいい癌であります。
ほとんど死なない癌といってもいいかもしれません。
StageⅠの患者さんは5年生存率が90%を超えています。
しかしながら転移を起こしてしまうと一気に予後が悪くなります。
5年生存率は約40%です。
定期的な検診で早期発見につなげてほしいです。