医学生は一般的に、
低学年(1年生、2年生)の時に一般教養と基礎医学を、
中学年(3年生、4年生)の時に臨床医学を座学中心で勉強します。
そして高学年(5年生、6年生)になると病院実習へと移ります。
「病原体学」はその中で基礎医学に含まれてはいるのですが、
実態は「感染症」といった臨床医学の分野と大きく関わっているため
すべての診療科において重要になってくる専門教科となっています。
「病原体」と聞いて
インフルエンザウイルスやボツリヌス菌
などを想像しできた人は大正解!!
実際の内容としては細菌、ウイルス、寄生虫などの
病気を引き起こす生物や物質を学ぶといったところです。
そう聞くと一瞬常識的な内容のように感じるかもしれません。
みんな大好き千円札に顔が載っている野口英世氏は
アフリカで黄熱病の研究をしていたことででも有名ですが、
これは黄熱病の原因である黄熱ウイルスの研究をしていたということなので、
これもれっきとした微生物分野ないし病原体学分野の一種です。
教科について
病原体学で学ぶ内容としては主に、
- 細菌学
- ウイルス学
- 真菌学
- 寄生虫学
- 毒素
- 感染時の病態
- 蔓延地域
- 媒介生物、宿主など
- 治療
などです。
一般的に広く知られているものがある一方で、
ヒトに強烈な害を与える割には
世間には広く知られていなかったりする病原体が
この世に膨大な数存在しています。
種類だけでも十分多いのに、
病原体ごとの様々な特徴や
感染した時の症状、治療薬や治療法も範囲となると
すべてを含めると途方もなく広くなります。
教科書について
基本的には肉眼では観察できない物質を扱っている内容なので、
きちっと頭の中でイメージできないと理解が難しいかもしれません。
もちろんそのためには教科書のイラストや写真を活用することが
とても大事になってきます。
勉強に使用を奨励されることの多い教科書は、
『標準微生物学』、『シンプル微生物学』
などです。
分野別に少し細かい専門的な内容まで求める学生にとっては
『図説人体寄生虫学』もあります。
また、同時に内科系の教科書を使うと
臨床とつなげて覚えやすくなると思います。
試験に関して
基礎医学は一般的に記述問題の出題が多いのですが、
「病原体学」の場合は少し違うこともあります。
もちろん、記述問題は主流ではありますし、
先生、大学によって異なることではあるのですが…
病原体の名前を答えたり、治療薬を答えたりすることが多いため、
記述というよりは、単語問題だったり
記号問題であったりすることは多いです。
詳細に関しては先輩から過去問をもらって確認しておくのがいいでしょう。
教授が変わっていない場合は数年間似た形式で出題されると思うので、
それ相応の対策を立てていきます。
病原体学が重要である理由
病原体学で出てくる内容は基礎医学のみならず
臨床医学において何度も出てきます。
どの診療科においても「感染」というのは重要な疾患です。
ウイルスや細菌、微生物、寄生虫は感染する生物に特異性があります。
また、感染する臓器に特異性があることもあります。
たとえば、マラリアを例に挙げてみましょう。
マラリアはハマダラカと呼ばれる蚊が感染者の血を吸い、
別の人に吸い付いた際にその人の体に入り、
血管内へと侵入します。
その後、赤血球を破壊し人体に多大な影響を与え、
最悪の場合には死に至らします至ることもあります。
逆に考えてみると、
マラリアは感染地域のハエにかまれても感染しませんし、
感染したとしても白血球には侵入しません。
また、空気感染や飛沫感染もしないため、
マラリア患者を隔離する必要はありません。
一見すごく重大な感染症でも、病原体の特徴がはっきりと理解できていたら
必要以上に恐れる必要がなくなります。
つまりそう考えるとこの病原体学というのは
非常に恐ろしい病原体や感染症に対して
ヒトはどのように振舞えばいいのかを教えてくれます。
新型コロナウイルスの蔓延で国中が大騒ぎしているこの時代、
そして、
これからの地球に襲い掛かるであろう
新たな感染症の大流行する時代対して
冷静に適切な対応するためにも
医学生であるなし関係なく
我々にとって最も必要な知識なのかもしれません。
病原体学の知識を持っておくことは必要になってくるでしょう。
最後に一言
今回は医学における専門科目である
「病原体学」について紹介してきました。
この記事が医学部を目指す皆さんにとって
入学後の生活の少しでもイメージしやすくし、
より医学部合格への気持ちを強めていただけたらうれしいです。
それでは。