【症状】
高齢男性に好発し、血尿が主な症状です。
肉眼的に赤い尿が出る肉眼的血尿に限らず、
検査によってはじめてわかる顕微鏡的血尿の場合もあります。
後者の場合は検診などの尿検査で指摘されて初めて分かるのですが、
顕微鏡で確認しないとわからないほどの出血ということは
相当早期の発見であるということです。
この段階で発見出来たらラッキーでしょう。
他にも、頻尿、排尿痛、残尿感、などの膀胱刺激症状と呼ばれる症状が
みられることがあります。
進行していくと、尿路が閉鎖することによる傷害が発生してきます。
水腎症、排尿時痛、排尿困難などが起こった場合はかなり危険です。
また腎臓に影響が現れたり、転移を起こしたりすると、
全身に症状が現れます。
体重減少や疼痛、全身倦怠感などが出てくるころには
かなり癌が進行していると考えられます。
【診療科】
泌尿器科(ほかの科にかかったとしても泌尿器科に紹介されます。)
【検査】
肉眼的血尿の主訴や、尿検査での顕微鏡的血尿の指摘があり外来に訪れると、
膀胱癌を疑って以下のような検査を行います。
尿検査
→尿細胞診で悪性の細胞の有無を確認します。
→尿中に癌細胞が存在するということは、尿がつくられてから出てくるまでの内のどこかに
癌が潜んでいる可能性が高いということになります。
超音波検査
→膀胱内の腫瘤を確認します。
→最も侵襲性の低い検査なので、診察室では真っ先に行われます。
膀胱鏡検査
→この検査で癌が見つかることが最も確実な診断法とされています。
→また、膀胱癌の増殖形態の区別をつけることができます。
<増殖形態>
・乳頭状有茎性~最も多い形態(約70%)。筋層非浸潤癌であることが多い。
・結節状広基性~境界不明瞭な筋層浸潤癌であることが多い。
・平坦型~境界不明瞭な上皮内癌のことが多い。
・乳頭状広基性 ・潰瘍型
IVU(静脈性尿路造影)検査
→膀胱内や尿管、腎盂に陰影を確認します。
→上部尿路上皮癌の合併の有無を検査します。ただ、近年はあまり使われていないようです。
単純胸腹部CT検査
→腫瘍の深達度やリンパ節転移、遠隔転移を検査します。
また、膀胱癌による尿閉などの症状による腎臓の異常についても見ることができます。
MRI検査
→膀胱壁への深達度を評価しやすくなります。
周辺臓器浸潤やリンパ節転移なども確認できます。
【治療】
治療法を決定するためにはまずTNM分類と呼ばれる分類を用いて
癌の進行度合いを表す必要があります。
アルファベットはそれぞれ、
T:腫瘍の臓壁への深達度合
N:リンパ節転移の有無
M:遠隔転移の有無
を表しています。
分類した病期と、その他の全身状態を考慮して治療法を決定します。
①筋層に浸潤していない場合 ≒早期発見
治療目的でTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行います。
再発のリスクが考えられる場合は追加の治療として
膀胱内に薬(抗がん剤、BCG)を注入します。
②筋層には浸潤しているが、膀胱内に収まっている場合 ≒進行しかけている
根治的膀胱摘除術+骨盤リンパ節郭清術を行います。
膀胱がなくなるため、さらに尿路変向術を行うことが必須となっています。
③周辺組織や周辺臓器(前立腺、精嚢、子宮、膣)に浸潤してしまっている場合 ≒進行している
②と同じ治療を行うのですが、その前にあらかじめ術前化学療法を行います。
④骨盤壁や腹壁に浸潤している場合 ≒かなり進行している。
手術は行わず、化学療法、放射線療法を行います。
尿の排出路を確保するために腎瘻を増設することもあります。
*手術の施行が難しいと考えられる高齢者や合併症持ちの患者には放射線療法や化学放射線療法を用いることがあります。
*TURBTは病理学的評価の診断のためほとんどすべての症例で行われます。
*尿路変向術には4種類存在し、患者さんの状態に合わせて選択します。
【リスクファクター】
・喫煙:最大発癌危険因子!!
・芳香族アミンへの暴露(染料工場などでの勤務など)
・慢性的な膀胱の炎症:ビルハルツ住血吸虫、膀胱結石、神経因性膀胱など
・医薬品:フェナセチン(解熱鎮痛薬)、シクロホスファミド(免疫抑制剤)が要因になることも。
・コーヒー:飲みすぎには注意。
【医学生より一言】
膀胱癌は早期には非常に症状の乏しい病気です。
多くの患者さんが定期的な検診や、他の疾患の精査中に発見されるケースが多いです。
治療に関しては、実際はTNM分類を用いてもっと細かく分けられていて
それぞれに対する治療も少しずつ異なっているのですが、
今回はあくまでもわかりやすくするために4つにまとめました。
詳しい治療に関しては担当医にお聞きください。
尿というのは体内にある不要な物質や毒素を
体外へ排出してくれるものです。
尿排出に関連する臓器(腎臓、膀胱、尿管、尿道など)に
障害が起こると、きちんと体外へ排出できなくなり、
毒素が体内に貯留することになります。
だから尿がきちんと出ることは非常に大切なことなのです。
少し恥ずかしい気持ちが出てきてしまうのはよくわかりますが、
尿が出にくい、排尿時痛がある、などの症状は
すぐに近くの泌尿器科(なければ内科の先生に紹介状を書いてもらって)に
診察を受けに行くことをおすすめします。