ひらがな表記の「がん」と漢字表記の「癌」の違い

体の中に出来た悪性の腫瘍を

「がん」と呼べばいいのか、「癌」と呼べばいいのか

迷ったことはありませんか?

 

今回はこのややこしい話題について

解説していこうと思います!!

 

今回は悪性腫瘍の表記について

 

「がん」と「癌」の違いとしては

以下のように決められています。

 

「がん」

非正常組織の増殖(=悪性腫瘍)及びそれにより引き起こされる疾患の総称

「癌」

上皮性の悪性腫瘍およびそれによる疾患の総称

 

つまり「がん」が最も広い範囲を表しており、

その中に「癌」「肉腫」「白血病」「リンパ腫」なども含まれるということです。

 

 

上皮性とは

 

ヒトの体は様々な組織で構成されていますが、

その中で、体外の世界と接している部分を覆う

表面の組織を「上皮組織」と呼びます。

 

わかりやすいのは皮膚です。

見るからに外の空気と接しているので

上皮組織感が漂っていますよね

 

では、腫瘍の好発する部位である消化管はどうでしょうか?

 

食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸とひとつながりになっていますが、

両端は口と肛門によって外の世界とつながっていますよね。

ということは、消化管の管内は外の空気と接していると考えられます。

 

実際、消化管は上皮組織によって構成されています。

結果、消化管に発生する悪性腫瘍は「癌」ということになります。

 

また、少しわかりにくいですが、

発生段階で消化管と同じ胚葉を由来とする

肝臓膵臓などの消化器に発生した悪性腫瘍も

「癌」と表記ということになっています。

 

 

表記の具体例

 

「癌」の具体的な例としては…

皮膚癌、肝臓癌、膵臓癌、子宮癌、膀胱癌、食道癌、胃癌、大腸癌

などが挙げられます。

 

「肉腫」の具体的な例としては…

骨肉腫、軟骨肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、粘液線維肉腫

などが挙げられます。

 

「白血病」の具体的な例としては…

急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病

などが挙げられます。

 

「リンパ腫」の具体的な例としては…

悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫

などが挙げられます。

 

 

ここで一つ問題です。

肺に出来た腫瘍は「肺がん」なのか「肺癌」なのかどちらでしょう。

あえて先に挙げた具体例には出さないでおきました。

 

まず肺の解剖学的構造を考えてみましょう。

 

肺は呼吸するために重要な器官です。

気道→喉頭→咽頭→口腔を介して

外の世界と接しているように考えられます。

 

だから上皮性の腫瘍ができるように感じられるため、

「癌」だと考えられます。

 

実際、「肺癌」で正解です。

 

肺に出来る腫瘍は、

腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌など

いくつかの組織型がありますが、

すべて上皮性の腫瘍に分類されています。

 

 

【医学生から一言】

 

上皮性の悪性腫瘍を「癌」、それ以外を「がん」、

というように表記を変えることは

患者さんに混乱を招く可能性があるので、

 

一般的に外来なので病名を伝える際には

すべての悪性の腫瘍を「がん」と表記します。

 

同様に、各保険会社が「がん保険」と

ひらがなで表記している理由も

「がん」すべてをカバーしているということを表すためです。

 

もし、「癌保険」という保険があれば、

「癌」しか保障されない可能性があるので

気を付けてくださいね。

*基本的にこのような保険はないと思いますが…

 

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